自社の特許を「パテントトロール」から守るための非営利組織「LOTネットワーク」が米国で急成長

特許を取ると、自社の製品を守るためだけではなく、第三者に対してライセンスを付与してその対価を得る等して収益源として活用することができます。それは当然の権利です。

パテントトロール/PAEの脅威

しかし、少し前から、第三者が特許を何らかの方法で他者から手に入れ、専ら金儲けの目的でその特許に接触する相手を脅かして使用料を取り立てることが増えており、そのような行為は「パテントトロール」と呼ばれ問題となっています。「トロール」は西洋の伝説で人から通行料を取り立てた怪人のことに由来します。

ただし、この「パテントトロール」の呼び名は過剰に批判的な印象を与えることから、アメリカでは「patent asserti on entities (PAEs)」、すなわち「特許(権)を主張する組織」という呼び方が用いられています。パテントトロールにしてもPAEにしても、企業にしてみればその脅威は変わりません。

LOTネットワークとは

そこで、最近、PAEの脅威に対してアメリカで非営利団体LOT Networkが設立され、急激に会員数を伸ばしていることが話題になっています。この団体はグーグル、キャノン、レッド・ツリー等が設立したものです。

最近、この団体に米国知財情報センターのIP Watchdogが取材を行った記事を見つけましたので紹介します。

会員同士がライセンス交換する仕組み

この記事によれば、LOTネットワークの会員はある契約に署名します。その契約によれば、会員は自分の特許について非独占的かつ条件付きのライセンスを他の会員に与えるというものです。それにより、会員の特許を何らかの理由により将来PAEに譲渡されたとしても、それを使っているネットワーク内の他の会員に訴訟ができないようにするというものです。但し、対象特許はそのネットワーク加入の時点で会員が所有しているものに限られます。

この団体の代表であるセッドン氏によると、アメリカの特許は2000年代は非常に強かったが、2011年以降の法改正や数々の新
判決によりその価値が下がる傾向にあるということで、PAE(LOTネットワークの定義によれば、利益の大半を特許の訴訟から得る法人)が比較的に安い値段で特許を買い、侵害者を訴えやすくなったとのことです。

2018年8月現在、LOTネットワークの会員数は175を超え、世界中の120万件もの特許が対象になっているそうです。大手
企業はもちろん加入していますが、多くのスタートアップ企業も加入しています。セットン氏によれば、それのスタートアップ企業は、自分の特許の価値に自信があり、何らかの理由によりPAEに特許が渉ってしまって「悪用」される可能性が将来的に生じると考える企業だろうとのことです。というのも、LOTネットワークに加入すれば簡単に売れなくなるからです。

確かに、自社或は善意の他者をPAEの脅威から守る方法としてLOTネットワークのような仕組みは有効であるように思います。日本ではPAEの脅威はそれほどではありませんが、アメリカで活動する企業はこのネットワークに加入することを考慮してもいいかもしれません。

GO GLOBAL!から転載>
『自社の特許を「パテントトロール」から守るための非営利組織「LOTネットワーク」が米国で急成長している件』(矢口太郎 国際弁理士(日本・米国))

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